地理地形
人類社会が当面する緊急で最も大きな課題は、地球環境と人口と資源のアンバランスです。前者についてはすでに多くの研究調査が行われて原因の究明に当っていますが、必ずしもそのメカニズムを明らかにするには到っておらず、またその対策については、国際レベルから、地域のレペルに到る多くの組織が動き出していますが、なお間題の解決にはほど遠い現状です。後者については、人口増加及びその分布のデータはほば正確に分かっており、地下資源についても未発見や未確定のものはありますが、その供給力はほぼ掴めています。問題は地上及び海中資源の可能性です。食糧の供給に限ってみた場合、気候変化の予測や発展途上国の開発能力、国際貿易等の不確定な諸条件があります。マルサス以来の原理的な問題と、極めて現実的な生活や住宅、政策の間題との間には大きなギャップが残されています。地理学は古代から環境の考察をはじめ、近代に入っては、アレクサンダー・フォン・フムボルトが今日言う生態学の原点をなす研究調査を行いました。簡単に言えば、熱帯アンデス出地において、植物分布が外界の気象等の変化といかに対応するかの観察を行って、生物学と物理学との橋渡しをしました。地理学はこの研究を受けて、人間社会と自然界上の間の関係の研究を育てました。リードリヒ・ラッフエルの「人類地理学」は重要な過程をなす研究でした。一方、フムボルトと同時代のカール・リッタ−は、世界諸地域の地誌的研究を進め、実証科学としての方法を示しました。それは中国の研究で命名を高めたフェルディナンド・フォン・リヒトホーフェンによって、コロロギー科学として発達されました。これらの流れは、ヴィダル・ドウ・ラブーシュによって、人間中心の地域研究となり、フランス及び世界各地域にわたる地誌として結晶しました。以上の古典的な地理学の足跡を受けついで、現代の地理学は多様な発展をとげています。
周氷期気候の変化と世界のユースタティク運動という地形学、気候学にわたる課題から、現代都市のシステム分析に到る広い幅を持ち、他方では、地理学思想の史的展望に対して、災害の予防、発展途上国の開発などを含む応用地理研究が発表されています。そのうち20は研究委員会として、継続的に研究されつつあります。それらの中で最初にあげた話題に関係するものは次の通りです。
応用地理学、レンヌ大学のフリボノーが委員長を務めていて。1971年に日本を訪間し、フランスの地域開発について公演しました。地理学と行動の著があり、彼自身きわめて行動的でした。
世界の土地利用調査、チューリヒ大学のベッシェが委員長でした。この研究は、ロンドン大学のスタンプ卿が始めたもので、イギリスの土地、その利用と誤用の著に結実した土地利用調査は余りにも有名です。彼は1950年代に世界の人口増加と食糧供給について警告を発し、イギリスにおける農村などの家畜や牧草の改良については具体的な報告をまとめていました。世界の土地利用調査は、各国について100万分の1土地利用図を作り、比較検付の資料とすることに始まりました。
医学地理学、イギリスのオープン大学のラーマンスが委員長をやっていました。風土病や伝染病の伝播などの調査をやっていましたが、現在の課題は発展途上国の衛生及び栄養状熊の研究で、人口間題と深い関係があります。
人間と環境、コロラド大学のホワイトが委員長でした。この主題はきわめて広く、近年の環境汚染の問題も自然災害の間題も含まれ、また理論的な考察、特に計量的な解析の間題も扱われています。ホワイトはシカゴ大学時代には洪水とそのお金などの経済的損失に関する地域調査を行い、国連のメコン川開発計面にも参加しました。
国際水文学年、フライブルク大学のケラーが委員長をやっていて、水文学の国際会議は日本でも行われました。湖沼・河川・地下水にわたる水の循環を始め、水収支を測ることにより農業生産、工業開発などの可能性が予測されます。水の分布はきわめてアンバランスであり、水資源は開発の主要な因子の一つです。
開発の地域的観点、ブラジルのポンティフィチア大学のベルナルデスが委員長をやっており、国際的援助や技術協力が必ずしも発展途上国の家計の発展につながらないことは周知の事実であり、それには、自然条件、社会条件などの地域的事実の調査が欠け、住民の側からの働きかけを促進する配慮が不足したからです。
人口地理学、アルパータ大学のコシンスキーが委員長をやっており、この委員会は1956年に世界100万分1人口地図委員会として発足し、世界の土地利用調査と並び人口の地域的分布に関する情報を地図化し、人口問題の解明に役立てました。1967年に行われたシンポジウムの結果は、人口と混雑する世界として刊行されています。
モンスーン・アジアの農業集落、ベナレスヒンズー大学のシンが委員長をやっていました。世界で最大の人口を抱え、密度が高いのは、モンスーン・アジアです。近代化も遅れており、人口と食糧間題について、最も解決が難しい地域でもあります。広島大学の米倉二郎を中心に1971年には日本で委員会が開かれました。以上の国際地理学連合の委員会を通じての活動のほかに、地理学者は、各分野で質素であるが、世界の環境や人口資源の課題に取組んでいます。

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